8月 7, 2018
ここ数十年、ヨーロッパの中でもシェンゲン圏と呼ばれる国々では国境を超える際にも検査やパスポートは不要で、本当に手軽に行き来する事が出来ています。また、シェンゲン圏以外の居住者(例えば私たち日本人などの外国人)がシェンゲン圏など60を超えるヨーロッパの国々を訪れる時にもビザ無しで90日間の滞在が許されています。
ところが近年の高まるセキュリティ不安からこの緩すぎる国境事情に鑑みてこのヨーロッパ28ヶ国を対象にETIAS(European Travel Information and Authorization System)と呼ばれるシステムが2021年から導入されることになりました。
シェンゲン圏ってなに?他のヨーロッパとは何が違うの?
シェンゲン圏とはヨーロッパの中でもパスポート無しで国境をまたげる、いわば1つの国家の様な関係性で結ばれる国々を指します。EUに加盟する国の内6ヶ国だけがシェンゲン圏の対象外となっています。その6ヶ国はブルガリア、クロアチア、キプロス、ルーマニア、イギリス、アイルランドアイルランドです。中でもイギリスとアイルランドは特に条約上は参加義務がある為、早めの加入が待たれています。
また、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスはEU加盟国ではありませんがシェンゲン圏のメンバーです。モナコ、サンマリノ、ヴァチカン市国も他のシェンゲン圏と国境を接すしており、事実上のシェンゲン圏として扱われています。
ETIASの目的はなに?
ETIASはシェンゲン圏に出入りする人たち(ビザ無しで出入国出来る人たち)の情報を管理しやすくするためのシステムです。また、ETIASはヨーロッパを旅する上で煩雑な書類のやり取りや都度申請を必要とするものでは無いので、ある意味では渡航者にとっても簡単な手続きだけでビザが不要になるので便利なシステムとも言えます。早く正確に情報を共有できるこのシステムでシェンゲン圏に入ろうとする悪者の入国を未然に防ぐことも大きな目的です。
2016年、ETIAS導入を発表したとき、欧州委員会委員長のジャン・クロード・ユンケル氏の言葉があります。
「我々は私たちの国境をまたぐ人間を知らなければならない。11月からヨーロッパに入国する人々に対してETIASを導入します。このシステムを使えば、彼らが入国する前からそんな人物なのかを把握することが出来るようになります。」
ビザとは何が違うの?
ETIASはビザではありません。ETIASは観光やビジネスなどの目的で訪れた人達の情報を迅速かつ的確に管理し、シェンゲン圏の安全を守ります。ETIASの申請はおよそ20分ほどです。ビザの許可を得ようと思うとはるかに長い時間がかかります。
導入によるシェンゲン圏の人たちや渡航者へのメリットは?
- 申請の手間と時間を削減
- 国境管理を改善
- EUビザ自由協定の補完
- 移民問題に貢献
- 外国人による犯罪やテロリズム抑制
ETIASの承認が必要な国は?
ETIASは現在60ヶ国が対象となっていますが、このシステムがスタートする2021年までにはさらに対象国が増える予定となっています。
EUの国籍を持つ人たちはETIASの申請は必要ありません。EU圏外の人達でも有効な居住者カードを持っていればETIASの申請は不要です。
アルバニア | グレナダ | ニュージーランド | 東ティモール |
アンドラ | グアテマラ | ニカラグア | トンガ |
アンティグア・バーブーダ | ホンデュラス | パラオ | トリニダード・トバゴ |
アルゼンチン | エルサルバドル | モルドヴァ | ソロモン諸島 |
オーストラリア | 香港 | モンテネグロ | 韓国 |
バハマ | イスラエル | パナマ | 台湾 |
バルバドス | 日本 | パラグアイ | ツバル |
ボスニアヘルツェゴビナ | キリバス | ペルー | アラブ首長国連邦 |
ブラジル | マカオ | セントクリストファー・ネイビス | アメリカ合衆国 |
ブルネイ | マケドニア | セントルシア | ウルグアイ |
カナダ | マレーシア | セントヴィンセント | バヌアツ |
チリ | マーシャル諸島 | サモア | ベネズエラ |
コロンビア | モーリシャス | セルビア | ツバル |
コスタリカ | メキシコ | セーシェル諸島 | アラブ首長国連邦 |
ドミニカ | ミクロネシア連邦 | シンガポール | アメリカ合衆国 |
ETIASの申請方法は?
上記60ヶ国のパスポートを持つ人がETIAS対象の国に入国する場合、必ず入国前に申請を終了し、承認を得ておく必要があります。申請はオンラインで問題が無ければ即座に承認されます。申請自体にかかる時間はおよそ20分です。
申請者は名前、出身地、生年月日等の基本情報から現住所、メールアドレス、電話番号、学歴、職歴、渡航予定などを入力します。
また、その他の重要事項として健康上の質問、戦地での滞在経験や前科歴についても質問があります。稀な例としてシェンゲン圏に住む後見人による申請が必要な場合はその人との関係性を証明する書類などが必要になります。
入力した内容はあらゆるデータベースと照合されて問題が無いと判断されれば即時承認されます。もし、要確認事項などがある場合は人の手によって審査が行われます。このプロセスの多くは最長でも96時間とされていますが、2週間を要するケースもあります。また、申請が拒否された場合、申請者には結果に異議申し立てや、再度申し込みを行う権利が与えられます。
ETIASはウェブ上で管理されるため、渡航者が重要書類を持ち歩く必要はありません。シェンゲン圏に入国するときには電子的なチェックが行われます。ただし、シェンゲン圏以外の国に入国する場合はETIASは効力を持ちません。EU加盟国でありながらもシェンゲン圏ではない国々(ブルガリア、クロアチア、キプロス、ルーマニア、イギリス、アイルランド)ではETIASは不要です。
電車や船、飛行機などの公共交通機関を利用する際にもETIASのチェックが行われます。ETIASの承認が無ければ公共の交通機関を利用することは出来ません。
嘘の情報や盗んだ個人情報を利用して虚偽の申請を行い、ETIASの承認を受けていたことが発覚した場合は即刻承認は取り消されます。
ヨーロッパを賢く快適に移動する方法をこちらでご紹介しています。
有効期限は?
ETIASの有効期限は3年間もしくは、申請時に使用したパスポートの有効期限が切れるまでのどちらか早い方になります。一度のETIASの取得で90日間の滞在が許可されます。
申請してから承認が下りるまではどのくらいかかるの?
入力内容に問題が無ければ承認は直ちに下ります。言い換えると、即座に承認が下りなかった場合は審議されるため、最長で96時間、場合によっては2週間を要する可能性もあります。
どのくらい前から申請しておくのがベスト?
何も問題が無ければ即座に承認が下りるので、直前の申請でも間に合いますが、万が一のために、やはり申請は早めにするのが良いでしょう。承認が下りた日から3年間(もしくは対象のパスポートの有効期限が切れるまで)は有効ですから数年以内に複数回渡航する予定がある人はタイミングを計って申請しましょう。申請や審査に時間がかかったうえに許可がおりずに再度申し込まなくてはならない・・・なんて羽目に合わない様に、事前にしっかりと準備し、旅行日程にも余裕を持つようにしましょう。
申請費用は?
今のところ、費用は1人につき7ユーロと発表されています。また、17歳以下の申請は無料です。
運用開始はいつ?
前述したように、ETIASシステムの導入が発表されたのは2016年ですが、現在は導入の準備段階であり、本格的な稼働は2021年を予定しています。
ETIASが必要な対象国は?
ETIASはシェンゲン圏でのみ必要です。シェンゲン圏に属さない国へ渡航する場合はETIASは不要です。つまりはブルガリア、クロアチア、キプロス、ルーマニア、イギリス、アイルランドは対象外です。対象国は以下の通りです。
ベルギー | スウェーデン | ポーランド | マルタ |
ルクセンブルグ | フィンランド | スロバキア | モナコ |
オランダ | デンマーク | スロベニア | リヒテンシュタイン |
ドイツ | リトアニア | ハンガリー | アイスランド |
フランス | ラトビア | イタリア | ノルウェー |
スペイン | サンマリノ | ギリシャ | スイス |
ポルトガル | エストニア | チェコ | バチカン市国 |
イギリス国民はどうするの?
イギリスは現在、EUを離脱する方向で調整されていますので、ETIASの導入についてもまだ不透明な状態です。
スイス国民の場合は?
スイスはEUに加盟していませんが、シェンゲン圏には入っていますので、スイス国民がETIASを申請する必要はありません。
スイスを訪れる場合は?
EU居住者以外の人がスイスを訪れる時にはETIASの承認が必要です。
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